オーガナイザー (5) ー プロの料理人の経験から学んだライフスキル

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「3番テーブルの料理できたぞ!」「5番テーブルあと何分でできるんだ?」「7番早くしろ!

以前、料理人として働いていました。それまで色んなことやってきましたが、料理には特にハマりました。まさにゼロからのスタートで始め、いつの間にかミシュッラン星のレストランで自分の一品を出すまでには成長しました。そして、その経験が人生のターニングポイントにもなりました。

料理の道に入るまではスキルも知識も全くなかったので、料理というのは、(自分が持っていない他のスキルと同様)、全く未知で自分の手が届かない世界だなというイメージをもっていました。少し慣れてからは、色んな人から「どうやって料理人になれたの?」と、自分がさも難しいことをしている人かのように聞かれることが増え、少し昔の自分を見るかのようでした。それだけ料理というのは得体が知れない、かつ人を惹きつけるものがあるのではと思います。

料理は奥が深く、時間と訓練が必要ですが、ゼロからのスタートで料理人として客にサービスを提供できるようになることは十分可能です。料理を通して、美味しい料理を作るだけでなく、自分のモノの見方や考え方、そして(カバーイメージの通り)生き方について気がつくことができ、他の分野でも適応できるようなライフスキルを学びました。今回は、それらについて少し共有したいと思います。

今回の記事は料理に関するものですが、どの一品をおいしく作るかといったものではありません(同様のものはネット上で大量にあります)。また、人生のターニングポイントになった料理人の経験ですが、キッチンの中での様々なドラマについては長くなりすぎるので今回では省きます。今回の焦点は、料理人の経験を通して学んだことがどうライフスキルやライフオーガナイザーに繋がっているということです。今回の記事では、料理とは何か、なぜ料理をするのか、良い料理人とは、料理人の経験から学んだこと、料理とライフオーガナイザーのつながりについて紹介します。

料理とは

個人的には料理とは、主に火を使って食べ物を作ることだと解釈しています。他に色々な定義がありますが、その中でも以下の定義は、火だけに限定されておらず包括的でいいなと思いました:「食材を混ぜて、合わせて、または熱して食べ物を準備すること」

また、「料理の歴史 (英語)」によると、料理の誕生と進化の奥深さを垣間見ることができます。

個人的には人参をそのままガブリと食べるのは料理だとはみなしていませんが、以下のビデオが示す通り、火を使えばいいというものではなく、時には自然に戻るというのも大事という視点も勉強になります。

食べなければ死んでしまいます。そういった「生きる」ための手段に加えて、見た目で人々を魅了するといった芸術の側面(料理はまず目で食べるとはよくいったものです)やクリエイティビティ(全く異なるものを合わせて一つの価値のあるものを作り上げるという)の要素も備えています。

一口に料理といっても、家庭でする料理、専門学校で学ぶ料理(特に資格を取得してプロになろうとする人向け)、レストランで作る料理と、色んな環境があります。今回の記事の舞台は主にレストランですが、大多数の人は、キッチンという戦場(走り回り、野次やモノが飛んでくる)という裏側ではなく、華やかでダイニングホールで食べることに徹するかとは思います。今回はなかなか普段見ることのないその裏側について紹介します。主に料理人の仕事は大きく分けて以下の3点かと思います:

  1. その日に備えた準備(知識やスキル、スピードや決断力が求められる)
  2. レストランオープン→ショータイム(いつ何が出てくるかわからないアドリブの世界)
  3. キッチンクローズ後の明日に備えた判断(翌日の準備に必要なものの買い出しや作業)

なぜ料理をするのか

家庭料理の理由としては、主に生活に必要な食事をとり、または家族の時間を楽しむという側面があります(*後者に関しては、近年では核家族化が進み、両親が共働き、または家族が揃っていてもそれぞれが携帯やテレビに夢中になって一緒の空間を共有しない「脱人間化」が進んでいるという問題もありますが)。

また、我々は他の動物と比べて脳のサイズが大きいため、より多くのカロリーが必要で、そのためにたくさん食べる必要がありますが、料理をして火を入れることで、効率の良いカロリー摂取や消化の手助けにもなります。料理をする理由の他の仮説としては、(上述の脱人間化の問題もありますが)料理をして他の人と共有するという社交的側面も備えています。以下のビデオはよくまとめられていると思います。

一方、レストランの料理人が料理をする理由といえば、あくまで仕事としてお金を稼ぐことです(特に、アメリカにビザ無しで国境を超えて、自国の家族に振り込みをするといった多くのラティーノにとっての理由の大半)。なので、もちろん気が合わない人とも一緒に働く必要があります(社交性は優先ではない)。

また、多くの料理人が自宅では料理をしないという事例が非常に多いのも意外でした(一種のワーク・ライフバランスと言えるかもしれません)。他には、今後もシェフとしての道を歩む、または自分の店を開くつもりで、訓練するためにもレストランで働いているという料理人もいます(筆者も然りでした。こちらに関しては、異国の家族に仕送りをするというタイプはあまりいませんでした)。ただ作るのが好きだからレストランで働いているという人もいました。

良い料理人とは

「デキる料理人の要素は何だと思う?」

少し考えてみてください。これはレストランで働き始めた当時、ヘッドシェフから実際に尋ねられた質問です。

「おいしい料理を作ること?」

恥じらいながらも出たこの返事に、追い打ちがかかりました。

「それだけ?」

「ええと、限られた時間で最高の料理を出すこと?」

「まだ十分じゃない。良い料理人とは、いつ何時もおいしい料理を提供できる準備ができきる人だ。」

正直、当時はどういう意味なのかはあまりよくわかっていませんでした(意図するところを理解したのは、嵐のような多忙の夜を何度か経験した頃でした)。

料理をどうオーガナイズするか

プロの料理人と、家庭料理/料理学校との大きな違いは、後者は比較的少数の相手に対して、何を作るか大体わかっていることが多いのに対し、レストランでは、不特定多数の客がどのタイミングでどの料理をオーダーするかが見えないというところです。

言い換えれば、料理人は、いつどこから飛んでくるかわからないものをキャッチして、しっかりと対応する、いわば暗闇の中で戦っているイメージです。

例えば、ある時、有名(高額)な料理専門学校を卒業したばかりの新人が店に入ってきました。数ヶ月した後でも、皆の期待とは裏腹に、短時間でいくつもの料理を作ることができないということがわかりました。他のスタッフよりは知識やテクニックはあったのですが、忙しいレストランで対応できるようなスキルや経験は積んでこなかったようです。

そこそこしっかりした料理を出し、客層も(金持ちで)要求が多いという一定レベル以上のレストランなら、料理を出す時間とタイミングはとても大事になってきます。そして、各テーブルに違うメニューを注文する客が座り、それを違った料理人が作ります。例えば、メイン料理(魚・ステーキ・パスタなど)は、数人のシェフが違うものを作るものの、全て同時に出す必要があります。もし15分かかるステーキと8分でできるパスタが同じテーブルの注文で入れば、ステーキとパスタセクションの料理人が声を掛け合い、後者が7分待ってから作り出して15分後に同時に出すという流れになります。ただ、これはあくまで一つのテーブルの話なので、同時に5−10つのテーブルに対応するとなると、一筋縄ではいかないことが想像できるかと思います。

そして忘れてはいけないのは、ストーブ(火)やフライパン、鍋の数やスペースなどは限りがあるので、どのテーブルから優先的に作り出して、どの料理が何分かかり、どのタイミングで作り始めるか、または同じ料理を多めに作り、複数のテーブルに提供できるか(テーブル1と3で同じパスタの注文があるが、同時に作れるか、タイミングは適切か)等を瞬時に判断する必要があります。特にパスタセクションは、麺を茹でるのとソースを作るので場所が取られるので、6つしかないストーブで約10のテーブルのために、1つの脳と2本の腕で、他のセクションに合わせながらどうタイムリーに対応するかを計算しながら動く必要があります。どれだけ忙しくても、時間を意識しながらおいしい料理を提供する必要があるので、自動的に、多数のタイマーが必要です。

時間に加えて、熱い料理に関しては、お皿もオーブンに20-30秒入れて完了時に出す必要がありますが、忙しさに追われてオーブンの中にお皿を置き忘れることもあるので、熱くて火傷するということもよくありました(料理人は火傷の跡がある人が多い!)。更に、同時に料理を出す別のセクションの同僚からの「早くしろ!」というプレッシャーや、ヘッドシェフから飛んでくるモノが当たっても、なるべく動揺しないように自分をコントロールする必要があります(以下のイメージのように、実際にモノが飛んでくることは何度かありました)。

キッチンがいかに混沌とした状態になりうるかがわかって頂ければ幸いです。大体、そのような戦場でやりとりしていると、随時汗だくになります。

大変な状況が少しでも伝われば幸いですが、まだそれで終わりではありません。

上述の、ヘッドシェフからのコメントを覚えていますか?

「良い料理人とは、いつ何時もおいしい料理を提供できる準備ができきる人だ。」

呼吸もまともにできないくらいの忙しい夜を何度か経験するうちに、少しずつ彼の意図したことが理解できてきました。

ただ単に限られた時間内に良い料理を提供することだけに集中していれば、遅かれ早かれ、十分な量の鍋やフライパンがないことに気づきます。また、どれだけ準備していても、気づかないうちにモノ(準備していたソースや予め混ぜていた材料等)がなくなっていたという状況に出会うことがあります。しかも、忙しさが超ピークの時に。

そのため、オーガナイズする習慣を普段から身につけておく必要があります。

洗い物に関しては、例えばフラインパンなら使った後すぐに洗う習慣をつけると、(熱いうちは汚れが取れやすいので)数秒できれいにすることができるので、「ゲッ、きれいなフライパンがない!」という状況を回避できます。また、自分の身の回りもソースや食材が飛び散ることもあるので、布巾で常にきれいにしておくことがオススメです。また、準備したソースや食材がピーク時にないという事態(料理人のあるあるといってもいいほどよくある)を回避するためにも、常にストックをチェックする習慣をつけ、少しでも空き時間があるときに補充や準備をすることでパニック状態になるのを防げます。

これらの習慣を身につけるための方法としては、まずは何が大事かを意識すること(実践あるのみ)、常にオーガナイズし続けること(実践あるのみ)、そして常に準備万全の状態でいること(実践あるのみ!)。

結局、筆者にとって良い料理人とは、(混沌の状態を何度も経験して気づいた)以下の3つの要素を備えている人だと思います。

  1. 質:ブレずにおいしい料理を作り続けること(そのためには、知識、スキル、経験が必要)
  2. 時間:限られた時間で素早く準備し、注文に対応できること
  3. オーガニゼーション:これらは洗い物、掃除、ストック補充やなどを通していつ何時も準備体制が整っていること(とても大事な点であるのにかかわらず、よく忘れられる盲点でもある)

そのために大事なのは、以下のイメージのように、しっかりと質を意識した仕事をし、すぐにきれいにし、次の状態に向けて準備をすることです。

思い起こせば、かなり流動的な職場の環境で、他の分野や普段の生活でも適応できるようなことを多く学べました。例えば、上の図に関しても、多くの書類を大量に重ねていては、瞬時に必要な書類を探し当てるのは難しいので、普段から上記のWork-Clean-Prepare (WCP)を意識すると効率化につながります。もし質・時間・オーガニゼーション力が身につけば、大事なコアスキルはもう手に入ったようなものです(テクニカルなスキルは時間とともに自ずと身につくので)。

料理人の経験から学んだライフスキル

  1. 料理のスキル:これは言わずもがなですが、もし料理ができるようになれば、食と職に困ることはおそらくないかと思います(職に関しては選り好みをしなければですが)
  2. 言語:筆者のケースでは、キッチンでスペイン語を学びました。この言語を話すときはキッチンで共に過ごした容陽気なラティーノたちを思い出します。
  3. オーガニゼーション:常に整理・整頓をして準備万端でいること。上述のこのスキルは、おそらく料理人生活から得たスキルで最も大切なものです:自分で出した汚れは自分で片付ける
  4. 全体像と集中:時間や材料との戦いで、全体像を把握したのちに優先順位をつけ、それぞれのタスクに集中することで、多くのことを成し遂げる力(多くのタイマー、同僚との調整、圧力やモノが飛んできても冷静でいること)
  5. 学ぶ力:ゼロから始めた料理人のキャリアで、全てのセクションを経験し、自分の一品まで提供することができたのは、一連の「学ぶ方を学ぶ」ことができたからだと思います
    (好奇心→観察してメモをとり、真似をする(研修など存在しないため)→家で練習→職場で「やらせてください」と言う勇気を持ち、拒絶されてもめげない心→チャンスをもらう→失敗→繰り返しチャレンジする→成功→何度か続けることで認めてもらう)

以上、学んだことを凝縮してみましたが、少しでも役に立った、もしくは料理をしてみたいという気持ちになった、ということになれば本望です。料理は難しいですが、ゼロからでも十分学べるし、学んだスキルは宝になるので後悔はしないと思います。食は我々人間にとって、生存と社交性という意味でも不可欠なもので、動物にはない一面や長い歴史があります。また、食や料理は人生と強くつながっており、料理を通してライフオーガナイザーとしてのスキルを学ぶこともできます。次に料理をするとき、少し意識してみてください。きっと、何かが見える(かもしれません)。

今回の学び 

デキるプロの料理人とは、時間内に美味しい料理を作れるだけでなく、洗い物などの整理整頓を通して常に準備できている人であり、そのスキルは他分野やライフスキルとして十分活用できる。

最後まで記事を読んでいただきありがとうございます。もしこのブログが気に入った場合は購読お願いします。もしコメントや質問があれば遠慮なくどうぞ。良い学びを!

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